こんにちは。ケンチーです。
私は2022年の9月から10月にかけて、スペイン巡礼の旅に出ました。
スペイン巡礼(通称カミーノ・デ・サンティアゴ)を終えて、自分がどのように感じているのかをこのブログに残しておきたいと思います。
なぜスペイン巡礼の旅にでたのか?
スペイン巡礼との出会い
日本ではあまり有名ではないスペイン巡礼旅。
フランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ポーからスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの約800kmを歩いていく旅です。

私がカミーノについて知ったのは4年前の話です。
もともとスペインのサッカー「La Liga」が好きだった為、2018年にサッカーを見る為にスペインを訪れました。

そこで出会ったのがサッカーだけではない魅力的なスペインという国。
人々がとてもフレンドリーで、日本とは違った街の雰囲気に大きな衝撃を受けました。
私が初めて訪れたヨーロッパの国だったこともあって、私はすっかりスペインの虜になり、翌年に2週間かけてスペイン中を周遊する計画を立てました。
その2週間の計画を立てる際に、スペインについてたくさん調べました。そこでスペイン巡礼という約1ヶ月間歩き続ける旅に出会ったのです。
スペイン巡礼について調べれば調べるほど、行ってみたいという欲が大きくなっていきましたが、当時の自分には1ヶ月間旅をするほどのお金も時間もありませんでした。
しかたなく2度目のスペイン旅では、バスク地方やアンダルシア地方などのマドリードやバルセロナ以外の大きな都市を訪れました。




スペイン周遊をして、地方によって異なる文化を持つスペインの魅力がわかり、より一層スペインが好きになり、スペイン巡礼旅への欲がさらに大きくなってしまい、死ぬまでには絶対行くと心に決めました。
巡礼に行くことができないまま就職
巡礼の夢を果たすことができないまま、大学卒業・就職の時期がやってきました。
就職したのは自動車部品メーカーの技術職。
1日中パソコンの前に座り、自動車部品の設計をする毎日でした。
経験を積むほど仕事の量が多くなっていき、残業も多くなっていきます。
周りの先輩たちをみても、みんなが忙しそうで、仕事ができる先輩ですらも残業の毎日。
もちろん1ヶ月の休みをとって旅に出るなんてことはできません。
「このままだと歩けるかどうか分からない定年後に巡礼に出ることになってしまう」と思い、辞めてしまおうか悩む日々。
ストレスからかアトピーも発症し、本当に辛い毎日でした。

それを見ていた彼女さんが「辞めちゃいなよ」と言ってくれて、勢いで辞めてしまいました。
会社を辞めたことで収入がなくなり、1ヶ月以上も旅にでることに躊躇しましたが、彼女に背中を押してもらったこともあり、念願のスペイン巡礼旅に出ることができました
カミーノで得られたもの
このような経緯で私は2022年の9月から10月にかけて念願のスペイン巡礼の旅に出ることができました。
33日間毎日20km~30kmを歩くのは決して楽ではありませんでしたが、得られたものもたくさんありました。
世界中の幅広い世代の友人たち
まず1つ目に思いつく得られたものは、世界中の友人をたくさん作ることができたこと。
自分と同じように無職になって来た人、定年を迎えて時間ができた為やってきた人、長期休暇をとってやってきた人、休学中の学生、ビジネスの経営者、医者、ミュージシャン、YouTuber等々。
様々な年齢、国籍、経験をもつ人々と話すことができて、その人の人生について聞くことができて、本当に貴重な経験となりました。
特にリタイヤ後の人々の話は普段聞くことがなかなかない話で、カミーノのことを「若い人たちにとっては必ず人生の糧になる」と皆が口を揃えて言っていたので、27歳で来れたことが良かったことなのかなと思ったり。
それでも話が合うのはやはり同世代の人々。
国は違えど、同じ時代を生きてきて、同じタイミングで巡礼の旅に出てきた人々。話が合わないはずがありませんでした。
最初は一人で出発しましたが、聖地サンティアゴに到着する頃には、たくさんの友人に囲まれながらゴールを祝うことができました。
韓国人の友達がたくさんできたので、いつか韓国に行って友人と再会をするという夢も持つことができました。

英語力
カミーノでの公用語は基本的に英語です。
1ヶ月以上の時間を日本語の通じない環境で過ごすわけですから、自然と英語力は高まります。
私は大学まで英語は勉強していましたが、社会人になった後は、英語の映画やドラマを日本語字幕で見るくらいしか英語に触れてきませんでした。
その為、現地に到着してすぐは、なにか言われても頭の中で日本語に翻訳して初めて理解ができるといった感じで、円滑なコミュニケーションがなかなかとれませんでした。
しかし、毎日歩いて、いろいろな人と話をしているうちに、頭の中で日本語に翻訳することなく、英語で理解をすることができました。

ですが、アメリカやイギリスのネイティブの方々の英語は速くて聞き取れないことも多々あったので、まだまだ勉強は続けていきたいと思います。
また英語ができるようになるためには、机での勉強ではなく、実際に人と話すことということを強く実感することができました。
ひとりで考える時間
カミーノでは友人がたくさんできるとはいっても、常に一緒にいるわけではありません。
歩くペースも人それぞれ。誰かと一緒に歩くのもいいですが、何時間もずっと人のペースに合わせて歩くのは大変です。
私は全体の半分かそれ以上は、一人で歩きました。
一人で歩くことで、絶景を思う存分楽しめたり、考え事に思い巡らせたりすることができます。

私の場合、歩いている間に考えることは基本的には下記でした。
・次の町まで後どれくらいかな〜
・足が痛いな〜
・ちょっと寒いな
・他の友人は今どこにいるのかな〜
・なんでこんなに歩いているんだろう
・日本帰ったら何をしようか
・カミーノ楽しいなあ〜
取るに足らないことばかりかもしれませんが、普段生活していて、長時間自分と向き合うことのなかった私にとって、貴重な時間でした。
また歩きながら何かを考えていると、普段とは違った思考になることができる気がしました。
強靭な足腰
重い荷物を背負って約1ヶ月間毎日20~30kmを歩き、しかも山道も多くあるため、自然と足腰は強くなります。

大学まで運動部に所属していた私でも、最初の1週間は足の筋肉痛との戦いでした。
また、周囲の人たちはみんな足にマメができて本当に痛そうでした。
しかし、その苦痛は最初の1週間だけでした。
毎日歩く距離はそこまで変わらないのに、ゴールに近づくにつれて足の痛みは無くなっていきます。
これは足が歩くことに慣れてきたことを意味していました。
カミーノを終える頃には、1日20km~30kmを歩いてもへっちゃらな強靭な足腰となっていることでしょう。
ただし、終わってからまた元の生活に戻れば、これは失われるかもしれません。
宗教への関心
カミーノデサンティアゴはキリスト教の巡礼路です。
その為、巡礼路の途中にはたくさんの立派な教会を見かけることができます。

どんな小さな街にも必ずある立派な教会や、たくさんの人々が集まりミサを行う光景を見ることで、なにが人々を信仰に向かわせるのかを深く考えさせられます。
私自身、とくに宗教や信仰心を持っているわけではありませんが、そういった人々を間近に見て、宗教について少し勉強してみようと思うようになりました。
ちなみに、巡礼者の多くは強い信仰心から歩いているわけではない為、キリシタンじゃないという理由で躊躇っている方、ご心配なく。誰にでも道は開けています。

積極性
スペイン巡礼を通して積極性も手に入れることができた気がします。
私はスペイン語は喋れないに等しく、英語も簡単な英語しか話すことができません。
しかも周りに日本人は皆無、ほとんどが欧米人と韓国人でした。
英語に自信がないからといって、受け身のままでいると、いつまでたっても一人のままです。
最初は英語で知らない外国人に話しかけるのは勇気のいることでしたが、一回話してみると、みんなが優しく良い人たちで、とても楽しかったです。
みんなで食べるご飯は美味しいし、誰かと一緒に歩くのも色々な話が聞けてとても楽しかったです。

言語に自信がなくても、話しかけてみると楽しいことが起きる。
そう気づいて、たくさんの人たちと話した結果、サンティアゴに到着する頃には、たくさんの友人に囲まれていました。

こんな積極的に話しかけることのできる自分を、巡礼前の自分は信じることができないでしょう。
日本人としての誇り
外国人と話していると分かるのですが、みんな日本のことが大好きです。
そんな国で生まれたことに誇りを持つことができました。
私が日本人だと言うと、決まってみんな日本の素晴らしい点を語ってくれます。
多かったのは、日本食とアニメについて。
寿司やラーメンはもちろんのこと、日本酒やすき焼き、たこ焼きも人気でした。
アニメでは、ワンピース、鬼滅の刃、ジブリ、ポケモン、クレヨンしんちゃんなどなど。
みんなが日本のことを褒めちぎってくれるので、日本って凄いんだなと実感するとともに、そんな国に住んでいることに誇りと喜びを得ることができました。
また、自分の知らない日本の素晴らしい点もたくさん知ることができました。
例えば、
・青森県の温泉が素晴らしい
・がんばれ父ちゃんっていう日本酒が美味しい
・自分の知らない日本のアニメ、ドラマが海外で人気
・久石譲という人がめちゃめちゃ有名(多分日本でも有名)
などなど
自分が無知ということもあるのですが、自分の知らない日本のことについてもっともっと知りたいと思うようになりました。
これまでにない達成感
フランスのサンジャンピエドポーからスペインのサンティアゴ・コンポステーラまでの約800kmの巡礼路を、1ヶ月間毎日歩き続けて達成したときの達成感は本当にかけがえのないものでした。
涙を流しながらゴールをする人もたくさんいました。

私の場合、1ヶ月間歩いてきたこともそうですが、学生時代から長年夢見てきたカミーノでしたので、達成感もとても大きいものでした。
しかし大きな目標を達成してしまい、自分の人生の大きな道標を失ってしまった喪失感もありました。
さらには巡礼の終わりは、それまで一緒に歩いてきた友人たちとの別れも意味しており、喜びや悲しみ、達成感、喪失感などなど。本当にたくさんの感情がありました。
これはこれまでの私の人生では、経験したことがないような感情です。
このような経験ができるのはカミーノの他にないでしょう。
カミーノ・デ・サンティアゴを終えて
長年の目標としていた「カミーノ・デ・サンティアゴ」
それを達成してしまった直後は、目標を失った喪失感が強かったです。
しかし、日本に帰ってきて時間をおいた今の心境は違います。
カミーノに代わる新しい目標を見つけていこうという思いが強いです。
そのために興味のあることにはどんどん挑戦し、自分の視野を広げていきたいと思っています。
そして夢・目標が明確になった時、そこに向かって進んでいきたいと思います。
カミーノのように毎日一歩ずつ進んでいけば、聖地に辿り着けると信じて。
