物理

少しずつ注ごうとするとコップからこぼしてしまうあれって何?【おもしろい流体力学】

こんにちは。ケンチーです。

皆さんはこんな経験はありませんか?

コップなどの器から別の器に水・お茶・スープなどを移し替えようとしたら、図のように器の側面を流れていき、溢してしまうような経験です。

今回の記事では、なぜこのような現象が起きるのか、また起こさない為の対策を流体力学を用いて解説していこうと思います。

それではいきましょう。

流れの理想と現実

皆さんが水を移そうとするときに、期待するのはこのような流れでしょう。

水は重力という下方向の力のみを受ける為、そのままもう一方の容器へと落ちていくと考えるのは当然です。

しかし、実際はコップの側面を辿っていきます。

何が右方向の力を与えているのでしょうか?

一緒に考えていきましょう。

流れるのは水だけじゃない?

実はこの場合、流れているのは水だけではないんです。

どういうことなのでしょうか?水が溢れる直前の容器の注ぎ口付近を拡大して見てみましょう。

おお。今にも溢れそうになっています。少しずつ下方向に流します。

さあ、水が少しだけ流れたところでストップです。ここまでは重力に従い下方向に流れます。

しかし、この流れる水に引っ張られるものが存在します。

そうです。空気です。水が空気を下方向に引っ張っています。

ここでその後の空気の流れを考えます。

空気が下方向に流れるということは、空気が元々あった場所の空気が少なくなり、圧力が小さくなります。

圧力が小さくなると、周りの圧力の大きい場所から空気が流れ込んできます。

そして、その空間に空気が流れ込むことで、圧力は元通りになり、一件落着です。

流れが逆行している?

ちょっと待ってください。勘の良い方はここまでの矛盾に気付くはずです。

水流周りの空気は、水に引っ張られて下方向に流れているはずです。

なのに、下から空気が流れ込むのは無理があるのではないか?

その通りです。水流右側の空気は下から流れこみにくく、圧力は完全には戻りません。

水流の左側の空間は周りに広いスペースがあるので、十分な空気が流れこみ、圧力はほとんど最初と変わらないでしょう。

そうして左右で圧力差ができました。この圧力差こそが水が曲がる原因になります。

圧力は大きい方から小さい方に力を与えるので、今回の場合ですと、水流の左から右へと力を与えます。

そして、水は容器の表面まで辿り着き、水は容器表面に沿って流れていくのです。

ちなみに、このように流れが物体に沿って流れていく現象を「コアンダ効果」といいます。

飛行機もこの流れの性質を利用して空を飛んでいます。

別の記事で詳しく解説しているので、よかったらどうぞ↓
飛行機はなぜ飛べる?

まとめ

いかがでしたか。

水を注ぐときは、実は周りの空気も引っ張られているのです。

そしてできた圧力差によって、水が意図しない方向に流れていくのです。

対策としては、注ぎ口が出っ張っているものを使いましょう。

出っ張っていると、注ぎ口付近の空間が広くなる為、左右の圧力差ができにくくなります。

流体力学についてもっと知りたければ下記の書籍がおすすめです。

また、私のブログでは流体力学についてわかりやすく解説しているので、他の記事も是非ご覧ください。
箱の中で鳥が飛ぶと重さはどうなる?
電車が急発進したら風船は前方に動く?
生卵とゆで卵を割らずに見分ける?
ストレートってなんで伸びる?
飛行機はなぜ飛べる?
風車はなぜ回る?